2022年1月15日土曜日

ッセイ『チェンマイの風』 「TES 合宿所界隈を散策しよう!」 の巻 米澤先生

エッセイ『チェンマイの風』

「TES 合宿所界隈を散策しよう!」

「年末新しくチェンマイ郊外にできたTESの合宿所で一泊してみませんか。」
タク先生の誘いに応えて、3人の生徒さんとその家族3人とTES のスタッフ2名、合計5名が教室前に午後2時に集合した。
平日午後の暑い陽を浴びながら、用意したミニバンに乗り込んだ。
タク先生が運転する車は街中を抜け、小一時間走ると、山の間を流れる小さなせせらぎの両岸をまたぐように広がる集落に着いた。
ひと1人が通れるような細道をたどっていった。
あちこちに散在する喫茶室を横目にして軒下をくぐり、吊り橋を渡り、右に折れ左に曲がり、木製の階段を昇り降りしながら道沿いに進むと、川の向かい側にあるやや大きなカフェに導かれていった。
それがタク先生お勧めの最初のカフェだった。














今回のツアーのもう一つの狙いは「郊外のカフェをはしごしてみよう」だったが、ここは谷川のせせらぎの音を聞きながらコーヒーを楽しむ喫茶室という趣向である。






なかなか飲み物の注文取りに来ないので、タク先生がみんなの注文を集めてこちらから持っていくことにした。
しばらくして飲み物が届いたが、ほかの人は注文通りの飲み物が来たが、アメリカンを注文した人のコーヒーの量がいやに少ない。
カップの半分ぐらいしかない。
しかも飲んでみたら、いやに苦い。苦すぎる。
たぶんアメリカンとエスプレッソを間違えたのだろう、ということで一件落着する。
それにしても、このエスプレッソの苦いこと!
がまんして、一気にチョウ苦いエスプレッソを飲み干した。
手持ち無沙汰なので、ほかの人がうまそうに飲んでいるコーヒーをじっと見つめていた。




帰りは来た時と別の吊り橋をたどって行った。
すると机の上でつまらなそうに座っている子犬が目に入った。
声をかけると、退屈していた犬は嬉しそうに走り寄ってきた。
身を縮めて尻尾を振る最大限のおもてなしを犬から受けて、この喫茶店を後にした。




カフェを出て15分ほど雑木林の中を縫って行くと、山道の途中に数軒の商店が立ち並ぶ集落が見えてきて、車は一軒の落ち着いた造りの家の前で止まった。
ここがTESの新しい合宿所である。



合宿所
駐車場の脇を抜け裏庭にまわると、バナナの木に囲まれた、広々とした裏庭があった。
サッカーのパスの練習や、キャッチボールができるくらいの広さに驚いた。





各人の部屋割を決め、荷物を整理していた。







6畳ぐらいの広さの部屋が各階に2部屋ずつあり、1階にリビングとトイレとキッチンがある。

やがて夕食の用意が始まった。
生徒さんの手助けを受けながら、タク先生が日ごろ鍛えた料理の腕をふるっている。
手際がよく、動きに無駄がない。
来る途中スーパーで買った肉、野菜、キノコが次々に大皿に盛り付けられていく。
おなじみのバーベキューである。生徒さんが近くの店で買ってきたビールで乾杯し、焼き上がった肉や野菜を頬張ると、乾いた胃の中に温かい感動が広がっていった。
ほろ酔い加減のうつろな目で空を見上げると、チェンマイの街中では見られないような満天の星が瞬いていた。




















声もなく、満天の星を見つめた。
この星を見るだけでも、ここに来る価値がある、と思った。

深夜の温泉巡り
酔い覚めてきた深夜、元気な3人は温泉に向かった。
歩いて5分足らずで温泉に着いた。
身体を浸す湯屋はさすがに門を閉じていたが、門の外に4つほど温水プールがあり、そこがお目当ての場所だった。











足を湯に入れることも禁止らしい。
温水プールの端に水着ですわり、プール際のベンチに腰を下ろして体や足に湯をかけるのが、この湯場のマナーだというタク先生の説明であった。
マナーに従って、3人は汲み出した湯を足にかけてしばらく湯のぬくもりを楽しんだ。

界隈の散策
朝は7時に起き、1階のリビングでパソコンの画像を見ながら、小一時間ヨガと有酸素運動をして、全員身体を目覚めさせた。
有酸素運動はかなり激しいアクティビティで、息が上がってしまった。
その後、パンと卵、コーヒーて軽く朝食を済ませた。











朝食が終わってから、界隈の散策に出かけた。
広い車道から小径に逸れると、もう別世界であった。
人に出会うこともなく、静かな山道を淡々と散歩道は続いた。
暑くなく、寒くない気候に恵まれ、最高の散歩日和を満喫した。













見知らぬ人影をみとがめて、飼い犬たちが大合唱する中を、5人は言葉を失ったまま、清澄な空気の中で至福の時間を味わっていた。


















朝のカフェ
小一時間歩いてほんのりと汗ばむ頃、お目当てのカフェに到着した。
山と山の間に開いた緑の平地に、翼を広げるように喫茶室が散在し、コーヒーの香りが漂っていた。
広がった平原には、ベンチやブランコなどが並べられ、子供たちが走り廻っていた。
私たち5人はひときわ大きなログハウスの2階に席を決めた。
少し暑くなった肌から汗をぬぐいさるように、さわやかな風が通り過ぎていった。
今まで歩いてきた遊歩道に、参加者の口から賛嘆の声が洩れた。

11時をまわった頃に合宿所に戻り、解散地点のTES に向かった。
チェンマイ市街に近づくにつれ、道路は渋滞していった。
正月休みを利用して、帰省する車の列に巻き込まれたようだ。
周りの車を見ると、タイ人の顔には、コロナ禍の憂さを吹き飛ばすような明るい笑顔がはずんでいるのが見えた。


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