週に一度ぜいたくな時間を過ごすことにしている。
ぜいたくと言っても何万円というビフテキを食べるわけでもないし、極上の寿司を注文するわけでもない。
一週間働いた労をねぎらうために、チェンマイ門の近くのバーンベーカリーでサンドウィッチを食べるのである。
バーンベーカリーのサンドウィッチ、特にツナサンドはチェンマイ一と言ってもいいおいしさである。
日本で食べるやや甘くて、高いサンドウィッチとは比べものにはならない。
日本人のオーナーが丹精こめて作るサンドウィッチは、日本人はもとより欧米人やタイ人にも大人気で、いつ行っても客は絶えることがない。
私のお気に入りの席は、1番奥の窓際の飲料水に近い席だ。
窓ガラス越しに見える古い門扉の向こうにある緑の木々を見ていると、なぜか心が静まる。
周りから英語、中国語、スペイン語の話し声が声高に聞こえても、一向に気にならない。
スピーカーから流れるスローなジャズを聞くともなしに聞きながらコーヒーを傾けると、ちょっぴりチェンマイに来てよかったと思う。
雀躍歓喜するような喜びではない。
淡々としみるような喜びが感じられる。
ツナサンドをほおばり、熱いコーヒーをすすり終わると、この淡々とした喜びを誰かに伝えたくなる。
特にコロナに怯え、時間に追われ、自分を見失いそうになっている日本の若い人たちに。
チェンマイにはほかの土地にはない何かがある、と思う。
大きく求めれば大きく与えられ、小さく求めれば小さく与えられる何かが。
私がチェンマイにひそかに求めたものは、バーンベーカリーで味わうこのささやかな時間であることにようやく気がついた。
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